龍昇企画「阿房列車」

　『阿房列車』は1991年、元祖演劇の素いき座の土井道肇さんからの依頼で、私が初めて他の劇団に書き下ろした作品です。元祖演劇の素いき座さんは、その後25年の長きにわたって、この不思議な戯曲を上演し続けてくださいました。
　本作は、題名の通り、私が敬愛してきた内田百閒先生の名作『阿房列車』から多くのエピソードをいただき構成したものです。何も起こらない、本当に何も起こらない、こんな作品を初の書き下ろしに選ぶとは二十代の私は、いまよりずいぶん勇気があったなと感じます。
　そして、当時からファンだった龍昇企画さんが、この作品を取り上げてくださるというのも、私にとっては夢のような出来事です。どんな舞台になるのか、いまから楽しみにしています。

平田オリザ